


2008.09.20(sat) さいたまスーパーアリーナ
残すところあと1組。誰が登場するかは承知済み。にも関わらず次のアーティストを選定するルーレットが回りだすとかなりの激しい手拍子が会場に響いた。じらされることに快感を覚えるように、発表されるまでの時間を堪能する。心の中ではあのアーティストの名を連呼しているのだが…。
コブクロ…。改めてその名が表示されると熱旋風が巻き起こったような熱気と歓喜が会場を包む。
ステージ上にふたりが現れると、オーディエンスは自分たちの存在を確認してもらおうとでも言うように懸命に手を振る。会場のメインライトが絞られ、青と白のスポットライトが代役を担うころ、先ほどの灯りはオーディエンスの手に染まり、波しぶきをあげているように見え始めた。コブクロはその大海原のなかでまず『君という名の翼』、『潮騒ドライブ』を披露した。
ここで「ツアーでは何度か歌っているんですけど、またCDにはなっていません」と小渕がオーディエンスの懐を擽ると、次に披露する曲の思い、意味を丁寧に説明する。タイトルは『ベテルギウス』。メロディが流れ出すとステージ裏には無数の光点が浮かび上がる。優しく流れるふたりの歌声に聞き入るように、静まり返った会場には紫色1色が柔らかく灯る。先ほどまで波しぶきを上げていた手のひらは星のようにきらめく。そのまま『永遠にともに』が披露されるとその和やかな曲群を迎えるように柔らかい拍手が包む。
和やかな雰囲気の中、小渕が「9月で結成10周年を迎えたました。歩んできた黒田の歩幅と私の歩幅は違いますが、お互い歩調を確かめ合って歩んできました。歌っているとき右の目線で黒田を確かめる。それは黒田も同じで左の目線で私を確かめる。黒田なしでは10年間歩んで来れなかったと思います」と心境を語ったあとで、「次に披露するのは10周年を記念して作った曲です。『時の足音』というのですが、シングル化も決定しました。ライブではまだ2回しか歌ったことありません。聴いてください。『時の足音』…」。歌う前に丁寧に語ってくれた“曲への想い”は感情移入するのに効果的だった。彼らの想いを聞き入ってから聴く新曲は特に身体に溶け込んだ。耳元から入り込むはずの歌声は身体全体で吸収されたし、脳で考えるはずの良し悪しは、身体とは違う別機能が役割を担っていた。
身を預けっぱなしというわけにも行かなかった。ここからは激しい曲が続く。『轍-わだち-』『神風』。優しい灯りはストロボにとって替わり終着地まで規定ぎりぎりのスピードで駆け巡る。小渕のギターはうねり、黒田の歌声はそれを煽る。めまぐるしく反転する昼夜に興奮と熱狂が高鳴り、コブクロが去ったあとも衰えることはなかった。むしろその歓声は次第に「アンコール」の言葉となり、彼らの再登場を促せた。
一度暗くなったステージに再びライトが照らされる。「アンコールどうもありがとう」と言う小渕のあとに、「どうもボーカルの大塚愛です」と黒田が笑わせる。ここで小渕が「おばあちゃんが100歳になりまして、親父から電話があったんです。すごく嬉しい気持ちになりまして。自分の胸の奥にあった曲を送ります…」。イントロが鳴り始めるとこれまでにない歓喜が響く。『蕾』だ。この歌を待ちわびたオーディエンスに涙を流すものもいた。最初から興奮がリードし高揚し切った曲終盤には、ふたりがマイクを外した。静寂のなか会場を響き渡るのは生の声だけ。心地よい緊張が駆け巡る。1万7000人が息を呑んだラストの演出にはこの日一番の拍手が送られた。
【セットリスト】
01.君という名の翼
02.潮騒ドライブ
MC
03.ベテルギウス
04.永遠にともに
MC
05.時の足音
MC
06.轍-わだち-
07.神風
アンコール
07.蕾
※1日目は9月20日(土)開催。出演アーティストは5組
※2日目は9月21日(日)開催。出演アーティストは6組